釣りに予想外はつきもの。

　狙った魚以外はたとえ高
級魚であっても外道と呼び
本来釣り師としてはあまり
喜ばないのが正しい態度で
はある。

　過去に何度も挑戦したが
結果の出せなかった難敵の
大物がいとも簡単に外道で
釣れてしまったら・・・。

　いくら我慢しても目尻が
緩み、口元がひきつるのは
仕方のないことかも。

　悪天候に無理を押して釣りを決行し
た人が、救助ヘリに釣り上げられてい
るのをニュースで見ることがある。

　遭難者の表情まではよく見えないが
お騒がせして申し分けないという気持
が姿に現われている。
　なぜか釣り上げられて観念した時の
魚の姿と重なって見える。

　ポッカリと洋上に浮かぶ
古びた潜水艦の甲板の上。

　男は真剣に釣り糸を垂れ
コック長は夕飯用のメイン
デッシュの食材をのんびり
と待っている。
　
　風もなく静かで、どこか
しら間が抜けていて、限り
なく平和な光景。

　狙っているのは白身魚か
青魚・・・。
それとも海亀?

　釣りの仕掛けは海中でなるべく魚に悟られないのが基本である。
ところが例外はつきもので、目立つ方が釣果の上がる釣りもある。
皮剥ぎの集魚板や深場釣りの集魚灯である。

　キラキラ光るアクセサリーや、暗がりに灯る明かりを見ると一寸寄ってみたくなる魚がいるというのは、人間の世界を見るようで興味深い。

　めったに釣れない魚が自分だけに次々と釣れることがある。
『えっ。またっ?』
　どうして自分の仕掛けにだけ掛かるのか自分にも判らない。
　他の人に申し訳ないと思いながら心はフワフワ天国にいる。

　反対に何をやっても自分だけ釣れないということもある。
『なんで ? ? ?』
仕掛け?　棚取り?　誘い方?理由が判らない。
　気分は落ち込み、時計を横目に地獄を彷徨っている。

　初心者が思わぬ大物を上げることがある。
船長の指事するタナとは的外れの場所に仕掛けがずれて
たまたまヒット、いやこの場合ホームラン。

　帰宅すると家族の評価は結果が全てである。
初めて息子に釣りを教えようと勇んで出かけた釣暦ン十年
の父親の権威は、どう繕っても言い訳にしか聞こえない。

　釣りの楽しさを息子に伝えられたことを、だまって喜ぶ
しかない。

十日も前に計画をし
五日前には竿を新調
二日前に仕掛け作り
当日早朝いざ出陣!

ところが港に着くと
なんと海は荒れ模様。
頼みの綱の大船長は
はやばやと中止宣言。

呆然と見つめる海に
後から後から現れる
白い兎がいつまでも
元気に跳ねていた。

　釣った魚をそっくりそのまま記録に残す方法に魚拓がある。
だがちょっと待ってほしい。

　平目やシイラのような平べったい魚はほぼ実物大と言っていい
が、体の断面が円に近い魚の場合背びれから腹ビレまでの長さは
およそ五割り増しになる。

　魚拓を見せられた時はまずその魚の体型を思い出してから感心
しても遅くない。

　ひとつを達成すると、次の目標に挑戦したくなるように
人間は創られているらしい。
　釣り人もまた更に難しい釣りへ、更に大物へとのめり込
んでいく。

　狩りの最終型の一つが猛獣狩りだとすれば、釣りの場合
猛魚の代表は鮫だろう。
　巨大鮫の噂を聞きつけ、自作のルアーで釣り上げること
に命を賭ける人が出てきても不思議はない。

『・・・しかし何だって
　俺の休みの日に限って
　三回も続けて雨なんだ。
　・・・・・・・
　しかも休日出勤すると
　晴れるってのは一体
　どうなっているんだ』

「パパッ・・・あのね。
　あしたママが遊園地に
　連れてってくれるって。
　必ず会社にいってね」