某有名店で働いたことがあります。
そこで私が行う業務は全て女性スタッフで、その上に統括している男性が一人いました。
彼は朝礼などの、他店の人たちの目にふれる時は“オレさあ〜”背筋もピンと伸びてテキパキと指示を与えます。
昼休みなど内輪の時には素に戻り!?
“ねぇ〜え、アタシさ〜あ、昨日カレとケンカしちゃってぇ〜”手も腰もくにゃ・・・。
完っ璧でした。そうれはもう見事なもの。

数多くの女性スタッフと“恋愛問題”を起こす確率は、ほぼゼロですから、会社にとっては重宝したことと思います。
適所適材とは、このことをいうのかと思いました(笑)
他店の人には女性たちと男性一人のチームに見えたでしょう。
カノジョはいつも質の良い高そうなスーツを着て、髪もきっちり整えていました。
第三者には乱れたところのない、身奇麗な「男性」に見えたことでしょう。
が、当事者たちは“女同士”なわけです。
昼休みなど、休む時間が合えば、“女の子同士”のグループで食べていました。

 カノジョとの会話は、例えばこんなふうでした。
「昨日さ〜あ、カレとディズニーランドでデートだったのっ
「え、あの雨の中を!?」
「昨日って、寒かったよね」
「市民デーでチケットもらって、日付指定だったから行ったのよ。
あんた達、雨の日にミッキーやドナルドがレインコート着るの知ってる? も〜、とってもかわいいのよ。今度、雨も日に行ってみなさいよッ。」

別の日には、
「今日さあ、寝不足なのよね。
深夜2時に、年下の友達から泣いて電話がかかってきたわけ。“ダンナに殴られた”って。
それでさあ、真夜中によ、友達の家に行ったわよ。
“男が自分より弱い者に手を挙げるとは何事だ。思い知れ!!”って、台所にあったフライパンで友達のダンナをボコボコに殴ってやったわ。
“ゴメンナサイ、もうしません”
“本当か、2度としないか”
“ハイ、2度としません”
“今度手を挙げたら、もっと殴ってやるから。自分がやったことの痛みがわかったか!!”
って説教してきたわ。プライパンへっこんじゃったけど。
とんでもないわよねぇ〜、自分のほうが体も大きいし力が強いのに、暴力はイケナイわ」

また別の日、私は化粧品カブレで目の上がカサカサで赤くなっていました。
カノジョは私を店の隅に呼んで優しく言いました。
「ちょっとぉ〜、tamagoちゃん、大丈夫?
あなた、今日は無理に仕事しなくていいのよ」
「そんなにスゴイですかね」
「ん〜、それより痛くないの? 気持ちの整理は大丈夫?」
??? ナニ、何のこと・・・?
「新しい化粧品にカブレちゃったんですけど・・・」
「えっ!! ごっめ〜〜ん、アタシ、てっきり男に殴られたのかと思って・・・」
いいえ、わたくしの人生はそこまでドラマチックではございません。と、その時思いました。

その他にもカノジョの発想、言動、遭遇する出来事はドラマチック満載でした。
まるで、1950年代の洋画で、恋愛に命をかける“嵐のような一生”を送る主人公のような人でした。