今日はクリスマス。

私が今年一番聞いたクリスマスソングは、ジョン・レノンのHappy Xmas (War Is Over)だ。これは、ジョン・レノンの没後30年ということで、ラジオなどでよくかかっていたせいもある。しかし私には、もうひとつ理由があることについ最近思い当たった。

私が最近、とても気になる人、それは戦場カメラマンの渡部陽一氏である。
その話し方ももちろんだけれど「本当に戦場カメラマンなの?」という疑問はあった。
バラエティではあるがその端々で、戦場のことを熱く語っており、実際にかなり危険な場所へいっていることも知った。ときには彼自身が撮影した映像がプロモーションビデオのように流れることもあり、そのBGMがHappy Xmas だったのだ。
この映像は、イベントなどでもたびたび使われており、私はYUOTUBEを含めて数回見ている。だから記憶に残っているのだろう。

その彼が初の単独写真集を出版するという。たしかに出すなら今がベストのタイミングだ。
出版記念のチャリティーイベントがあり、それが昨日のクリスマスイブだった。

以下、率直な感想。
○会場入りする本人を偶然見かけた。渋谷では当たり前にいそうな、紺のジャケットを着用していた。帽子はかぶっていなかったと思う、少なくとも例のベレー帽ではなかった。あの格好は衣装だとは思っていたが、もっとラフな、たとえばMA-1とか革ジャンとかが普段着だと思い込んでいたので、意外だった。スマートな普段着は、気づかれないための(ある意味)変装?。
○予想していたより、背が高く、華奢なイメージだった。
○観客が、意外とバランスよかった。学生風、OL風、サラリーマン風、同業者風、子連れママなどで、年齢もそこそこ散っていた。
○口調は、やはりおなじみの調子…というか、TVよりも一つ一つの言葉を区切りゆっくりと、ときにはオーバーアクションで、かなり抑揚もあった。芝居ががった口調だがよどみない。何度も言い慣れているからかもしれないけど、もしかしたら台本があって演技指導をされているの?であればかなりの長台詞だ。
○今回のイベントの収益はすべて「国境なき医師団」へ寄付するとの事だったけれど、1ドリンク付1,500円で、どの程度純粋な収益があるのだろうか。会場のセッティングなど必要経費は全て出版社持ちか?
○彼のカメラマンとしての力量は、どうなんだろう?私個人の感想としては、いいと思う写真もある。プロのカメラマンに、ぜひ感想を聞いてみたい。

と、まあ突っ込みどころはさまざまあれど。

彼の活動や立ち位置には賛否両論あると思うけれど、私は決して無意味なことじゃないと思う。
戦場カメラマンという仕事を広く伝えて、興味を持たせて、その先にある戦争、そして犠牲になる弱者に目を向けさせた。
それがたとえ一過性のものでっあったとしても、だ。

おそらく、今はマスコミに利用されているだけで、そのうち消えていくのだろう。マツコ・デラックスと同じ視点で、キワモノ扱いしている記事もあるしね。
多くの人は(もしかしたら私も含めて)このブーム的なものが去れば、彼の存在を忘れてしまうだろう。けれど、その中のひとりでもふたりでも、彼の発したメッセージを考え向かい合う人間が増えれば、それはとても意味のあることだと思うのだ。

彼の目は、真剣だった。
驚いたのは、最初こそ客席でフラッシュが光っていたものの、途中から一切それがなくなったことだ。
彼の話に、その真剣なまなざしや想いに、引き込まれていく様子が手に取るようにわかった。

途中で、質疑応答の時間が持たれたので思い切って手を上げると、運よく指名された。
もし、彼と話す機会があったら(そんなことは一生ないと思っていたのだが)どうしても聞きたいと思っていたことだ。

「賛否両論ありますが、ピューリッツァー賞をとりたいと思いますか」
「できることならとりたいです」と彼は言った。

トークは1時間弱で終了。
最後に、彼自身の手から参加者全員にサインつきの写真集が配られ、私の番が来たとき「現場では必ず助けていますので、安心してください」と彼のほうから言われた。
「笑顔の写真で、賞がとれるといいですね」と私が伝えると、
「最近はピューリッツァー賞も、その方向で動いているようです」と答えた。
握手したその手は、さらりと乾いていた。

BlogPic

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サインにまで戦場カメラマンと書くあたりが、ちょっと笑える。キャラクターとしてセットになっているのね。
もし、彼のキャラクターが本当に作られたもので、「ピューリッツァー賞のことなんか聞きやがってよ、あせったぜ。ほしいに決まってるじゃん、なあ」なんてあとで仲間内で話していたら、どうしようなんて一瞬思ったけど、ま、それはないな。ないと思いたい。そこまでは作られてないでしょ、さすがに(苦笑)。

このイベントに参加したことで、思い残したことが2つ。
手フェチの私が、彼の手をじっくりと見なかったこと。こんなに近くで彼の手を見ることは、本当にもう、二度とないだろう。
彼が東戸塚に住んでいるという噂があったのに、確認しなかったこと。
はい、どっちも、ミーハーチックな後悔です(苦笑)。

彼の写真が、プロのカメラマンとしてどの程度の領域に達しているのか、私には分からない。でも、うまい写真がいい写真とは限らない。
誰かが書いてたけれど、彼のすばらしいところは、被写体がおびえていないことなんだそうだ。戦場カメラマンにとって、それはとても強い武器なのだという。
彼にしか撮れない写真が、きっと、きっとあるのだろう。
戦場カメラマンは、ほとんどの人がそれだけで食べていくのは難しい、ヘビーな仕事だと聞く。この先、彼がどのように変わっていくかはわからない。できれば、マスコミに踊らされたり飲み込まれたりせずに、今のピュアな気持ちのままで戦場カメラマンを続けてほしいものだと、切に願う。

渡部陽一氏の想い、そしてジョンのメッセージが、世界中に届きますように。

Happy Xmas!