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タイトルに惹かれて、ずっと気になっていた本だった。
文庫のカバーもなんとなく雰囲気がよく、「いと浪漫チック」な内容を期待していたのだ。

しかし、文芸春秋のHPでは「究極の驚愕、ミステリーの奇跡がここにある」とあり、「あなたは最後の一時まで、ただひたすら驚き続けることになる」とまで書かれている。

確かに、ミステリーというか、推理ものではある。恋愛的な内容も含まれている。
終盤になればなるほど、意外な事実が展開されて、ばらばらだったピースがひとつになっていく。

そして最後の最後に、思わず「え〜、そうくるか」って言葉にしてしまうほどのドンデン返しがある。だけど、この驚きは推理小説としてのものではない意外性というべきだろうな。確かに思い返せば納得する複線が、そうとはわからないよう巧みに引かれている。
かなり特異な展開だけど、最後まで読んではじめてタイトルの意味がわかるのだと思う。

“葉桜の季節に君を想うということネタバレ”って検索ワードがあるはずだわ。

「そうなんだよな、みんな、桜が紅葉すると知らないんだよ」
主人公である元私立探偵・成瀬政虎の終盤のこの台詞が、タイトルにつながっているのかな。

赤や黄に色づいた桜の葉は、木枯らしが吹いてもそう簡単に散りはしない。

この小説の最後の一文である。
私たちがイメージする“葉桜”とはちょっと違って、桜の葉のことなんだろうけど、このフレーズが本書のすべてを象徴していると思う。

私としては、推理小説でも恋愛小説でもなく、まったく別ジャンルの小説(これを語るとネタバレにつながりそうなので心に秘める)としてなら、楽しめると思う。でも感想が両極端に分かれそうな本だった。

追記:これ、絶対映像にはできないと思う。読んだ人ならわかるだろうなあ。