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リヴァー・フェニックス幻の遺作と言われているダーク・ブラッド、先週、横浜の映画館で見ることができた。

舞台はアメリカ西部の砂漠地帯。かつて白人によって奪われ、核実験が繰り返されたその土地は、今は無人の荒野がどこまでも広がる、この世の果てのような場所だ。ネイティブ・アメリカンの血を引いた青年ボーイ(リヴァー・フェニックス)が、妻を白血病で亡くして以来、社会との関係を断ってたった一人で暮らしていた。もうすぐ世界の終わりが来ると信じている彼は、美しいバフィーを一目見て生きる本能を目覚めさせていき、バフィーもまたボーイの妖しく不思議な精神世界に惹かれていく。(公式HPより一部引用)

これ、ものすごくおおざっぱに言ってしまえば、「俗世界に生きるパワフルな女性と、世の中を諦観してしまった孤独な男性との、狂気のラブストーリー」だと思う。でも、舞台設定からして、核問題とか、人種問題とか、そういったことももっと描かれていると思っていたので、そのあたりも期待していた。

でも、そこはちょっと期待はずれ。リヴァーが撮影途中で逝ってしまったことも影響しているのかもしれないけれど、その辺の説明が希薄で、エンディングでボーイの住み家が、あんなことにされてしまったのは何故なのか(どんなことかはネタバレなので書けませんが)、それもわからなかった。ちなみに、パンフレットでもそこには触れていない。

この映画には、大人のラブストーリーには必然の(おそらく期待していたファンもいたであろう)、ラブシーンがほとんどない。これはある事情により、ラブシーンが撮影スケジュールの最後に回されることになったため。リヴァーはその撮影の前に、急逝してしまったので、ボーイとバフィーとのラブシーンは撮影されないまま終わったわけ。

リヴァーの不在により未撮影だった部分は、監督自身がストーリーテラーとしてナレーションをつとめるということになり、映画は完成した。おそらく私が感じていた物足りない部分は、そのシーン〜ボーイとバフィーの最も親密なシーン〜に、台詞としてちりばめられていたのであろうと推測するのだが、いかがなものか。あるいは、未公開部分(があったとした)に含まれていたかもしれないけれど。

しかし、リヴァーの演技や容姿は、充分に堪能できた。ボーイの孤独感や狂気的な部分、ふと見せる少年のような表情、絞り込まれた美しい肉体……「年齢を経た彼を観てみたかった」と思わせ、ジェームス・ディーンの再来と言われたのも、うなずける。もし、DVDになったら、もう1度見てみようと思う。

もう二度と会えないという現実。それが、想像をかき立て思いを募らせる。リヴァーに限らず、自分のいる世界から消えてしまった人への想いって、そういうものなんだ。人を恋うる気持ちは想いで募り、思い出は想いを深く刻み込んでいく……。