じつは20代の時、本物のおネエ(っつーか、オカマ)に出会ったことがある。
当時は特にそうだけど、私はどちらかといえば、人と違ったデザインの服を着るのが好きだった。
模様がグチャグチャにはいっていて目立つとか、色がギラギラで目立つカッコなのではなく、地元には売っていないデザインの服を探すのを楽しみとしていた。
例えばピラピラしたレース使いの服が流行れば湘南でなく、(よりピラピラを目指し(笑)原宿まで買いに行きたいヤツだった。

さてカマに遭遇したのは夏の湘南だった。
今でもあの時の服は覚えていて、夏だけど秋を先取りした茶系のスカートに白のTシャツ、その上に赤茶のビスチェ(下着でなく秋仕様の生地)をあわせていた。
(下着の上に直接ビスチェでないのは、時代ということでごかんべんを)
某駅前で信号待ちをしていたら、後ろからやや低めの男の声で、
「あ〜ら、あなた、オシャレねえ!!」

振り返ると、あごラインまでのボブスタイル、化粧をしているが口元のヒゲがうっすらと青くなったおカマだった。
筋肉質のカノジョはTシャツ(胸ふくらみはなし)にスカート、サンダルという湘南の夏にふさわしい軽装で、更にこう言った。
「ワタシも着てみようかしら! どこで買ったの?」

その年の湘南の思い出は、おカマから服を褒められたことのみが残り、あとのことは記憶にない。

本物に会ってしまった私は、時々思う。
おネエやるなら、本気でやれ。
そう生きると決めた人たちは、本気で自分の心に従って生きているのだ、と。