突然やってきた母の入院騒ぎ。
ことの始まり?は「入れ歯の調子が悪い」と言い出したことだった。
以前入れ歯を作った医院はイマイチだったそうで、今回行ったのは総合病院の歯科。
根っこの抜歯があるため「血圧の数値と心臓に異常がないか」を問われた。
病院嫌いの母は(高齢なのに〜)検診をサボっていたので、歯科医のW先生から「万が一何かあってはいけないので、検診に行って下さい」と言われる。

正常だというデータを示さなければ治療してもらえない。
母がしぶしぶ近所の病院へ検診に行ったのは月曜日。
翌日に病院から呼び出しがあり【緊急】と書かれた結果用紙を渡され「すぐに大きな病院へ行くように」と言われたという。紙を見ると「貧血」と書いてある。
「こっちが年寄りだと思って、大きな声で‘早く病院へ行って! このままじゃ死んじゃうよ’って言うんだよ。この年になって、死なんて言われたらびっくりするよ。あの先生嫌だ」と怒っている。
近所でも評判の良い先生が変な対応をするだろうか?
ズバリ言わなければならない程の状態…。
これは早くしなければと「貧血なら鉄分の補給をすればいいんだから総合病院へ行こう。」と、母をなだめて歯科にかかっている総合病院へ連れて行った。

内科へ診察に行くと、家族の方は?と呼ばれた。
最初はこちらも暢気で、先生は友人のK君に似ているな〜と思った。弟だと言ってもおかしくないくらい。

…なんて思ったのもつかの間、医師の口から出たのは即入院。
非常に危険なので、今から医師の管理下に置くのがベストだという。
検査してみないとわからないが、最悪の病気の可能性を告げられ母も私も動転。
母は「もしその病気なら治療はして欲しくない。この年でつらい治療は嫌だ。治療しないで死んでもいい」と言う。
本人は今すぐには入院を決心出来ないという。

一旦待合室に出て、再度私だけ診察室で医師と話をする。
至急残りの家族に連絡をとって下さいと言われる。
本人は非常にショックを受けています、というと、昔は病名を本人には告げないのが一般だったが、今は患者の状態をみて告げるのだという。
「お母さんは意識もしっかりしてらっしゃいましたから。
今は患者さんご本人に治療を受けるか受けないか、今後の人生をどう過ごすか決めてもらうんです。
検査しないと分かりませんが…。五分五分です。」
K君似の先生は、先に母に可能性として…と病名を告げた時には厳しくこわばった顔つきでいたが、この時は優しいむしろ家族である私を思いやる表情だった。
仕事とはいえ、可能性とはいえ、重い病名を告げる時というのは緊張する場面なのだろうと、医師の仕事の大変さを感じた。
つづく…