このところ何かと問題の多いスカイマークだが、今回、消費者庁の要請によって、機内の文書(サービスコンセプト)が回収されることになったという。どうやら、機内での不満は消費者センターにどうぞ、という点が問題らしい。
このニュースは知っていたのだが、つい先日札幌へ行く用事があって羽田から千歳までスカイマークを利用することになり、本当にそんなことが書いてあるのかと、前座席の背ポケットに入っていたサービスコンセプトなるものを確認してみた。
いやはや、これがほんとに面白いことが色々書いてあってビックリした。
曰く、「乗務員の衣服は自由ということになっています、、、機内の苦情は一切受けつけません、、、時として厳しい口調を使うことがあります、、、」
え〜!と思ったけれど、実際のCAたちはごく一般的なユニフォームを着ていて、この点はちょっと拍子抜け。
しかし、苦情を一切受けつけない点と厳しい口調うんぬんはどうなんだろう。
これが文面通りだとすると、
「あの〜、羽がもげてて落ちそうなんですけど‥‥」
「おだまりっ!!」
ということになるのかもしれないなと。

さておき、
in the soup、つまり「どつぼにハマる」という意味だけれど、それは、この札幌行きの前日の話しだ。
一日で、「え〜、マジかよ!」と思うような、かなり大きな失敗を三回もしてしまったのだ。まるで何かに魅入られたように次から次へと問題が発生!

普段はだいたいパチンコ屋にいる僕だが、たま〜に仕事をすることもある。某女子大の英語関係の学科のHPの制作と管理を数年前からしていて、その日は打ち合わせのために三軒茶屋まで出掛けることになっていた。
大学教授数人と午後二時に学校で待ち合わせをしていたので、寝坊しちゃいけないと、前日から目覚ましを11時にかけていた。
しかし、たまの仕事なもので緊張しているのか、目覚ましが鳴る時間よりずっと前に目が覚めてしまった。
寝ぼけ眼で枕元の時計を見るとまだ8時半を少し回ったところではないか。一瞬、二度寝しようかとも思ったけれど、いやいや今度こそ本当に寝過ごしちゃうかもしれないと怖くなり、勇気を出して起きることにして、ベッドの左横のパソコンデスクに置いてある、昨日の飲み残しのコーヒーカップに手を伸ばし、ゴクゴクと二口ばかり胃に流し込み、、、。
「うげうげげげ!」
なんとそれはコーヒーカップではなく、その隣に寄り添うように置いてあった灰皿だったのだ! 「え〜、マジかよ!」
灰皿と言ってもミカンの缶詰の空き缶を代用したもので、まさにコーヒーカップと同じような形大きさなのである。いつも防火用に半分ほど水を張り、パソコンいじくりながらタバコを捨てているので、もはや十分毒性を持ったタバコ汁と化している。
今更気づいても、もう遅い。飲んじゃったよ。
あわてて指を口に突っ込み、吐き出そうとしたけれど、まったく出て来ない(泣)。
あれー、死んじゃうかもしれない。
タバコ2本食べると死ぬ、とどこかで読んだ記憶があるし。
台所に飛んで行きしばらくうげうげしていたけれど、やはり出て来ない。息をするたびになんとも言えないまず〜い味覚というか匂いというか、未経験の感覚が鼻に抜け、気持ち悪くなるし、いやぁまいった。

しかし、いくら待っても死にそうにないので、しかたがないのでそのまましっかり歯を磨き、だいぶ早いけれど出掛けることにした。
極楽寺からだと鎌倉に出てそのまま湘南ラインで渋谷まで行ってもいいのだけれど、時間がたっぷりあるので、藤沢に出て一服し、小田急使って中央林間から田園都市線で三茶に向かうことにした。時間はかかるけれど、JRを使うよりずっと安い(笑)。

藤沢駅のベッキーズで今度こそ本物のコーヒーを飲んでいると、知り合いの夫婦に偶然出会い合流することになった。
久しぶりに会うこの夫婦が僕は好きだ。
お互い複数の子供を持つ家庭がありながら、大恋愛の末駆け落ち(じゃないかもしれないけれどそんなようなもの)し、今は結婚し二人で住んでいるという、なんとも大胆な二人。
しばらくはバカっ話しに花を咲かせていると、僕の携帯が鳴った。
メールではなく電話の音だ。
「はいもしもし」
「おはようございます、○○大学の△△です」
いつもの事務の女性の声だ。
「本日、11時にお越し頂くことになっておりますが、予定通りでよろしいでしょうか?」
「えっ!?」
時計を見ると、今まさに11時ジャスト。
そんなバカな。
「あのぅ、約束は午後2時じゃなかったでしたっけ?」
「いえ、11時ということで先生方もお待ち申し上げておりますが」
この時点で内心「え〜、マジかよ!」
「ちょっと待って下さい」
iPhoneのカレンダーを確認すると、午後2時と記してある。
あれ?と思い、メール履歴を見てみると、その△△さんからのメール、、、なんとそこにはちゃんと11時と書いてある。
理解不能、なんでよ! どうしたら11時を午後2時と書き写し間違えるのだ!
そんなこと今はどうでもいいか。
「ごめんなさ〜い!何でか分かんないんですけど、勝手に約束は午後2時だと思っちゃってて、今はまだ藤沢で、コーヒーとかのんびり飲んじゃってます〜。あ〜どうしましょ。先生方待たせるわけにも行かないし、明日から二日ばかり留守にするし、、、申し訳ないですけど日にちあらためましょうか?」
「そうでしたか、ちょっとお待ち下さい」
極めて冷静な口調でそう応じた彼女は、いったん電話から離れ、、、
「あのう、では本日午後三時ということでよろしいでしょうか?」
「あ、はい。けっこうです。ほんとうにごめんなさい。それじゃあ、今日伺いますので」
というわけで、ほんとにとんでもない勘違いをしてしまったのである。
 
三時までにはまだだいぶあるが、そんなに時間を潰せるわけもなく、結局午後1時半にはその女子大に着いてしまっていた。
構内に入り目的の建物の一階に設けられたくつろぎスペースのような所で、うつらうつらして目を覚ますと、たぶん授業が終わったのだろう、女子大生がぞろぞろ入ってきて、いくつもある長ソファーにゴロゴロし始め、なんとも居心地が悪い。
杖を持ったジジィが端っこで一人、どういう態度でいたらよいのか実にムズかしい。
あ、そうだトイレに行ったりしよう! と思いつき、廊下に出てロビーをうろつくが、女子用はあるのだが男性用が見当たらない。女子大だからまあそうかもしれないが、それにしても男性職員だっているのだから平等にあってもいいと思うのだが、やっぱりない。その代わり、女子トイレの隣に車いすマークと男女両方のマークが付いた個室トイレが一カ所だけあったのでそれを使うことにした。

中は広く快適でゆっくり用を済ませ、便座から立ち上がったすぐ左の壁に設けられた水洗ボタンをポチッっと!
「りりりりり〜!りりりりり〜!、、、、」
なんと! それは非常用ボタンだったのだ!
「え〜、マジかよ!」
押しやすい位置にあり過ぎだろ!しかも軽く押せちゃったぞ!
よく考えたらそれは当たり前かもしれないのであって、、、、。
慌てて停止用ボタンを探したのだが、そんなものはどこにもない! どうやら、一旦鳴りだしたら止まらない仕掛けらしい。
わ〜困ったと思いながら扉を開け、そっと廊下を覗くと人の姿がどこにもない。
外側の壁にも同じ非常用ボタンがついていたが、やっぱり停止用ボタンはどこにも見当たらない。
その間、ずっと「りりりりり〜!」と鳴ったままで、おまけに、扉の外側の上ではパトライトまで回っている。

ん〜、逃げちゃえ! そう決めて階段の角までは足を引きずりながらも小走りに、そこからは敢えてゆっくりと歩き、さっきまでいたソファーに何ごともなかったように、ではなく、なんかあったのかなぁ、騒がしいけど、という体を作りながらゆっくりと座った。
その場にいた女子大生たちも、なんだろう?と少しざわついている。

それにしても来ないもんだね、救護班!?
車いすの人が中でどうにかなっちゃっていたらどーすんだ!
と、的外れな怒りを感じつつ、目をつむって無関係者を装った。
結局、それから二分後くらいだろうか、階段をどどどっていう感じで事務方っぽい人が二三人降りて来て、トイレに駆け込んだが、、、
その後はまた目をつむってしまったのでどうなったのかはよく知らない。でも、いつの間にか非常音はしなくなっていた。いやぁ意外と気がつかないもんだ、あんな騒がしい音がしなくなったというのに。

このトイレからの一連の行動を客観的に眺めることができたら、たぶんミスタービーンそっくりだろうな、とつくづく思った。
それにしてもミスタービーンは大変だ、こんな日が毎日続くのだから。



高瀬がぶん