問題は前号のコラムを読んで下さい。
もう一度よく読まないと、この問題にとりかかれないかもしれません。
さて、今回の問題は難しいバージョンでしたが、ここではまず簡単なバージョンを考えてみましょう。
これを解いた後に難しいバージョンにとりかかる方が分かりやすいので。

簡単なバージョンは分かれ道に「優柔不断」はおらず、「正直者」と「嘘つき」の二人だけがいます。

そこで、どちらか一方の男に、左右どちらかの道を指差しながら、こう質問をします。
「こっちが天国ですか? と聞いたらアナタは『ハイ』と答えますか?」
この質問が正解となります。
さて、ここで、もし指差したほうの道が天国だったとしたらどうでしょう。
質問された男が「正直者」だとしたら、もちろん「ハイ」と答えます。
では「嘘つき」は何て答えますか?
実は「嘘つき」も「正直者」と同じく「ハイ」と答えるのです。
嘘をつき通すためには「ハイ」と答えるしかない、といったほうがいいかも知れません。

「嘘つき」になったつもりで考えてみましょう。
「指差された道は『天国』に通じる道なので、オレは嘘つきだから当然『イイエ』と答えるべき、、、???、、、待てよ、単純に『こっちが天国ですか?』と聞かれたならもちろん『イイエ』と答えるが、質問はそうじゃない。『天国と聞いたらハイと答えるか』、という二重の質問だった。『天国かどうか』という質問と『ハイと答えるか』という二つの質問だ。そうなると答えは変わってくるな。嘘つきのオレが『ハイと答えるか』という質問に対し『イイエ』と答えたとしたら、それは正直な答えになってしまうではないか。『私は嘘つきなのでイイエと答えます、という正直な答え』。
つまり、オレは『ハイと答えるか』という質問に対しても嘘をつかなくちゃいけないので、ここは『ハイ』と答えるしかない」。
「ハイ!」

というわけで、指差した方の道が「天国」だった場合は、「正直者」も「嘘つき」も、どちらも答えは「ハイ」となります。
逆に、そちらが「地獄」だった場合にはどちらに聞いても答えは「イイエ」となります。
従って、「ハイ」と言われたらそちらの道を選べばいいし、「イイエ」と言われたら、違う方の道を行けばよいということになります。
以上が簡単バージョンの正解とその解説です。

さて、次は難しいバージョン。
嘘をつくか正直に言うか分からない、という「優柔不断」が加わることで、話しはいささか複雑になります。
さておき、上述の簡単バージョンの正解は、実は、この難しいバージョンの二問目の質問となります。
つまり、一問目で「優柔不断」を確実に排除することができれば、二問目は簡単バージョンの問題と同じになるということです。

そのためには、最初に誰に対してどんな質問をしたらよいのかということですが、、、。

左、中、右、、、目の前に並んでいる三人の男のうち誰でもよいのですが、とりあえず、ここでは一問目の質問を左の男にするという仮定で話しを進めます。
左の男に対し、中の男を指差しながらこういう質問をします。
「私が、この男(中)が『優柔不断』なのかと聞いたら、アナタは『ハイ』と答えますか?」
これが正解の「質問」です。
但し、この質問だけで「優柔不断」を排除できるわけではありません。
排除するためには、一問目の回答によって二問目の相手を的確に選ぶという、アナタの行動が必要になってきます。

ではまず、左の男の回答が「イイエ」だった場合について考えてみます。
●左の男に対する最初の質問:「私が、この男(中)が『優柔不断』なのかと聞いたら、アナタは『ハイ』と答えますか?」
●左の男の回答:「イイエ」

この状況で可能性は全部で三通りあります。
1)左の男が「正直者」だった場合。
中の男が「優柔不断」ではないことが確定するので、二問目の質問はそのまま中の男にすればよい。
2)左の男が「嘘つき」だった場合。
この場合も1)と同様、中の男が「優柔不断」ではないことが確定するので、二問目の質問はそのまま中の男にすればよい。
そして、
3)左の男が「優柔不断」だった場合。
当然のことながら中の男は「優柔不断」ではないので、1)2)と同じように二問目の質問はそのまま中の男にすればよい。

このように全ての可能性を考えても、左の男に対する一問目の質問の回答が「イイエ」だった場合には、中の男が「優柔不断」ではないことが確定するわけです。
従って、一問目に「イイエ」と言う回答があったら、とにかく二問目は、その「イイエ」と名指しされた男(このケースでは中)にすればよいということになります。

では次に、左の男に対する一問目の質問の回答が「ハイ」だった場合にはどうなるか。いささか複雑になるのでよく読んで下さい(笑)。
●左の男に対する最初の質問:「私が、この男(中)が『優柔不断』なのかと聞いたら、アナタは『ハイ』と答えますか?」
●左の男の回答:「ハイ」

この状況でも可能性は全部で三通りです。
1)左の男が「正直者」だった場合。
中の男は「優柔不断」なので、ニ問目は左か右の男にする。
2)左の男が「嘘つき」だった場合。
中の男は「優柔不断」なので、ニ問目は左か右の男にする。
そして次です。
3)左の男が「優柔不断」だった場合。
中の男は「優柔不断」ではないが、その事実を知る術はない。
但し、このケースならば、少なくとも残った右の男だけは「優柔不断」ではないことが確定する。
なぜなら、「ハイ」と答えた左の本人こそが「優柔不断」であるから。
従って次の質問は右の男にすればよい。

このように、「ハイ」という回答を聞いた場合には、3)のケースの可能性もあり得るわけです。
この場合は、1)2)で出した結論のように、次の質問を左右どちらか、、、というわけには行かなくなります。
つまり、「もしかしたら今聞いた左の男こそが『優柔不断』なのかもしれない」と考える必要があり、そのリスクを排除するために、次の質問は左の男にはせず、残った右の男にすべきという結論に至ります。
こうすれば、二問目の相手が100%「優柔不断」でないことが確定するからです。
もっとも右の相手が「正直者」か「嘘つき」かを知ることはできません。
でもそれはもはやどうでもよいのです。
要は「優柔不断」でさえなければよいのですから。
簡単バージョンで説明した通り、「正直者」でも「嘘つき」でも結果として答えはひとつなのですから、右の男に対する二問目の質問で、確実にアナタは「天国への道」を知ることができるのです。

以上、正解を説明するのが難しい(笑)。

高瀬がぶん