今回は、「長くなりそうな話」をちょっと中断して、先日起きたことを書きとめておきます。あとで、あ〜あの頃のことだったんだなと分かるように。

「気がついたら病院のベッドの上、、、」
って言う話しはよく聞くが、こないだ初めてそれを体験した。
大雨の中バイクで事故って頭打って気絶! 正真正銘、気がついたのは病院のベッドの上で、「お名前は? 生年月日は?」という女性の声で初めて気がついた。
それから数時間は意識朦朧ながらも、人間することはちゃんとするんだなぁと後で実感した。
たぶんiPhone取り出して姉の電話番号を調べ看護師さんに教えたり、免許証を出したり、、、どうやらそんなことはしたらしい。
記憶は曖昧、、しかも、事故の記憶については全くないのだ。

これまでバイクで五〜六回事故っているが、記憶が抜けていることは一切なかった。
数年前の秋から冬にかけて、わずか4ヶ月の間にバイクで3回も事故ったことがある。不信心だからと言ってバチ当たり過ぎ! っていう感じで、とにかくよくコケた。
しかもそのうち2回はバイク全損!
そんな短期間にバイク2台を潰すとは珍しい、とレッドバロン(いつも買うバイク屋)の人は仰った(笑)。
で、その2回の全損事故のうちの1回は、救急車で運ばれるほどの事故になったのだが、、、。
車に撥ねられる瞬間、目の前に広がった真っ白い壁のような光景。それは僕を横から撥ねた車が白いワンボックスカーだったからだ。そして、身体が5メートルほど飛ばされ道路に叩き付けられた時の鈍い音と全身に走った電気的なショック。ちっとも痛くはない、ただただ寒い! 身体を動かそうとしても、手足がピクリとも動かないのでかなり焦る。撥ねられて転がっている場所が道路の真ん中なので、このままじゃまた轢かれちゃうかもと。
しかし、そんな心配をよそに、すぐに何人かの人が駆け寄って来てくれた。
その現場がたまたま湘南記念病院の目の前だったので、駆けつけて来てくれた人の中には看護婦さんの制服の姿もあり、「あっ、ちょうどいい!」とか思ったりしたが、なぜか救急車が呼ばれ、目の前に立派な病院があるにも関わらず、結局別の病院への搬送ということになったのだが、その間も身体はまったく動かなかった。 

ところが、搬送先の病院のベッドで二時間ほど休んだら意外にも身体は普通に動くようになり、傷も擦過傷だけなので帰ってよし!、、、なんだよおいっ!、、、という具合に、寸分の隙間なく記憶は連続している。
他の事故の時も「いててててー!」という程度で済んでいるので、覚えていないと言うようなことは一切ない。

それが今回は事故と言っても相手はおらず、たぶん30キロ程度の速度で走っていて、なぜか理由ははっきりしないが、自分で勝手にコケただけなのに、不思議なことに、コケる瞬間どころかコケたと思われる場所の20メートルほど手前までの記憶しかないのだ。
そして、次の記憶が病院のベッド。
その間の時間が僕の人生からすっぽり抜けてしまったことが、なんか妙に気持ちが悪い。
それに納得がいかない。
雨が降っていて路面が滑りやすかった? 確かにそれはある。
それにしても、普通事故る時は「あっ!」と思う瞬間があって次に何か好ましくないことが起こるわけで、少なくともその「あっ!」までの記憶があってもよさそうなものなのだが、その「あっ!」の記憶さえもまったくないのだ。
ごくごく普通に走っていて「雨がけっこう降ってるな」程度のことを考えていたかいないか、とにかく何か危険を察知したとか言うことは全くない状態が最後の記憶なのだ。
もっとも、今回のように頭を打ったりすると、その原因となる出来事から遡った時点からの記憶が失われる、ということがよくあるらしく、それを今後思い出すかどうかは分からない、と医師は言う。

思えば、これまで経験して来た事故で、頭を打ったことはなかった。
先ほどの身体が全く動かなくなった事故でも、倒れる瞬間自然に両手で頭をカバーしていたようで、両肘、両掌はかなり酷く傷ついたが頭は打たなかった。
それが今回とは違う点で、もっとも不思議な点でもある。
今回、両腕、両掌にはかすり傷さえない。
素手でハンドルを握っていたにも関わらずだ。
擦過傷や痣として残ったのは、左の膝とその周辺、そして左顔面の頬骨、顎、目の周辺。加えてヘルメットの左側の擦れ傷。
何がどうなったのかは分からないが、この傷を見る限り、手を出さずに顔面から路面に突っ込んで行ったことになる。
そして頭を打ち、結果として、気絶し、脳内出血を起こしていたという、、、。
なんで? なんでオレは手を出さなかったんだ?
それが分からない。
事故現場は50メートルほど続く幅2メートルの狭い直線道路。そんなにスピードを出せる場所でもないし、特に障害となるようなものは何もない。
倒れたのは自動車修理工場の前で、作業していた人が事故の一部を目撃しており、その人が救急車と警察に連絡してくれていた。
加えて、バイクも預かっていてくれたので、病院の帰りに寄って話しを聞き、ついでにそのバイク(どこも壊れてない、ラッキー!)に乗って帰ってきたのだが、、、(笑)。

「倒れる瞬間は見てないんですが、なんか音がして振り返ると、倒れたバイクと人がずずずっと滑ってきたんで、こりゃ大変と駆け寄って行ったんですが、声を掛けても反応がなく、起き上がれそうにもないんで救急車呼んだんです。何か危険を感じて急ブレーキでもかけてスリップしたのかなぁと思いました」
「とにかくありがとうございました。でも、危険を感じた記憶もなく、ブレーキかけた記憶も一切ないんですよね、どうしたんでしょうね私?」
「さぁ、、、(笑)」

と、こんな感じの事故、それも結果としては大したことない事故(笑)。
いや、正確に言えば、今のところ大したことないと思われる事故。
いやもっと正確に言うと事故でもない。
病院のベッドにいる時に看護師さんが「警察の方がきておられます」というので、「はいどうぞ」と。
目を開けるのがうっとうしいので警官の顔を見ぬまま会話をする。
「どうしました高瀬さん」
「え〜、さっぱり分かりません」
「相手はおらず、ん〜、人身事故でも物損事故でもない」
「自分に対する人身事故ですかね(笑)」
「わっかりました、これで失礼します!」
そう言ってさっさと帰って行ってしまった。
これでよいのだ、たぶん。
交通事故扱いで救急車で運び込まれると保険が効かないと聞いたことがある。そうすると治療費がバカ高くなるわけで、、、。
前回救急車で運ばれ入院するでもなく二三時間病院にいただけなのに、あとで請求された額が6万円を超えていたので超びっくりした記憶がある。
救急車高ぇ〜! と思ったがそんなことはなく、救急車はあくまでタダで、病院の治療費が高かったのだ。時間外治療ということに加え(たぶん午後10時頃)、保険も効かないということで、どうやらその金額になるらしい。
それが今回は半日以上病院にいてCTも時間をあけて2回撮ったにも関わらず6900円。いいぞ湘南鎌倉病院! ということでもないか(笑)。
要は国民健康保険が効くか効かないかである。
いやぁ、保険料滞納してても有効期限内ならば保険証は有効、ということがこれで分かった。

今回、おかげさまで外傷はまったく大したことがない。
絆創膏を膝と頬っぺたと顎に貼ったくらいのもの。
それでも、医者からのいくつかの質問に答えて、一応7年前に脳腫瘍の手術を受けていることを話したら、その時点で脳外科医の医師にバトンタッチということになった。
さっそく頭部CTを撮ると脳内出血があるという。
これが今後どうなるか分からないので、このまま三時間ほど待って、もう一度CTを撮りましょう、と。
でもこの出血は新しいもので、以前の脳腫瘍の手術とはまったく関係がないと。
撮り直しの結果出血が酷くなっていると、けっこうやっかいな問題になる。
何しろ頭蓋内部で出血した血液は体内に吸収されることはないので、最悪頭にドリルで孔を空け、、、という具合に。

そうしてちょっとヤな感じの時間を過ごすことになったが、そうしているうちに頭もスッキリしてきて、身体のあちこちもゆっくりと痛くなってきたりした。
そして再診察。
その結果、出血範囲はこの三時間で減少傾向にある、と。
ただ、このまま放っておいて自然に出血部分が消える(散逸)ケースもあれば、慢性的に微量な出血が続き出血の範囲が縮小しないケースもある。
そうなると何らかの処置をしなければならないので、とりあえず三ヶ月ばかり間をあけてもう一度CTを撮りましょう、ということになった。
一件落着!

ところで僕は疑っている。
ひょっとして、事故る前から気絶していたのではないか?
ナルコレプシー(突発性睡眠?)でも起こしたか?
それ、こわ〜い!



高瀬がぶん