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 その木を見つけた時はしばらく足が止まりました。最初は木の幹の途中に顔のようなものが付いているように見えました。何だろうと思い近くへ寄って見ると、う〜ん何だこれは!
 単なる自然のいたずらでここまで不思議な紋様が現れるものなのか。

 私はそこの「場」に何か普通でないものを感じました。そしてその時からふっと意識の中に、あの木のイメージが浮かんでくるようになりました。気になりだすと何をやっていてもそのことに捕われ、仕事にも支障をきたすまでになったのです。

 数日後私は再びあの場所を訪れていました。不思議な木はあの時の表情のまま静かにそこに居ました。私は何をするでもなく木の前に立っていました。
 見れば見るほど顔に見えてきます。それもドクロの顔。笑っている表情にも見えるし、何か言いたいことのある顔にも見えます。

「あんたも 呼び止められたようじゃな」
私は一瞬木がしゃべったように錯角し周囲を伺うと、後ろに老婆が立っていました。
「その場所に止まるものは 声の聞こえるもの・・・ あんたにも聞こえたようじゃな」
声?いや声は聞いていない。
「いや なにも聞いていませんが・・・」
「あんたはさっき その木に向かって 口を動かしていましたぞ」
私が? 木に話しかけた? いや そんなはずはない 全く覚えがない。
「あんたもこのままじゃと 普通のひとに もどれなくなる」
普通のひと?に もどれなくなる? ってどういうことだ。
「あなたはいったい誰ですか。何を知ってるんですか?」 
「話しておかねばなるまい。付いてきなされ・・・」 

怪談話かSFか、とにかく何かの物語のプロローグにありそうな出だし。
一枚の写真はそんな連想をずるずるひっぱり出すような力も持っています。
でも、これって「妄想」って言うんですかね?  《怪物擬木》三部作 完。